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富野由悠季の監督術 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア (ニュータイプ100%コレクション)』大森英敏

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

大森氏はエフェクト関係の作画をなされていたようで、劇中で印象的なファンネルの動きなども氏の手によるものだそうです。
監督とのディスカッションはビーム関連が中心になった模様。

「たとえばビームサーベル一本とってみても、ビームの形状はどのようなものにしたらいいのかとか、サーベルのビーム同士がぶつかったときにはどうなるのかといったことなどのチェックですね。
具体的にいうと、ビームサーベル同士の激突は、粒子と粒子の干渉ですから、いままでのような刀で斬り合ってツバぜり合いをするようなチャンバラスタイルではない戦いの表現法があるのではないか?
とか、ビームライフルのビームは、細かい粒子が飛んで相手の体を貫くのだから、レーザーなどのような光のイメージではなく、質量のある”もの”のイメージで描けるのではないか?などといったことです。
それらを監督のイメージされているものに近づけるために、何度も何度も打ち合わせの時間を取りました。そういった話し合いの後で、ようやくエフェクト関係の作画に入りました」


大森氏の仕事への真摯な姿勢が感じられるコメントですが、注目したいのは監督にビームのイメージがすでにあるということです。
いずれ取り上げる予定がありますが、岡田斗司夫の『オタク学入門』新装版での巻末対談にて、ビームサーベルの幅は細くあるべきだというこだわりを吐露しています。
しかし、そのこだわりはシリーズ初期においては画面に映されることはありませんでした。

「何度言っても、アニメーターは僕の言うようにはやってくれない。僕が原画をチェックしている時には、本当に細くしろ、これ以上太くするなって、細かな指示を出したものです」
(『オタク学入門』より)


これは判断が難しいところですが、当時のアニメ業界において、演出家の権限が決して高くなかった可能性があるということなのでしょうか。それに伴って当時流行りの『スターウォーズ』のライトセイバーばりの太いビームをアニメーターが好んで描いたというのはあったかもしれません。
真偽はわかりませんが、強力な発言権を得て作られた本作においてはどうか?
実に「太い」ですね。特に映画後半でのνガンダムとサザビーとの戦闘シーンでは、メガ粒子を飛び散らせながら切り結ぶビームサーベルの太さが画面に強いインパクトを与えています。これは演出の妥協なのか?
私はこれもひとつの監督術ではないかと思います。不本意にせよ定着したイメージを全否定するのではなく一旦引き受けて、これまでのシリーズ視聴者に違和感を抱かせないファンムービーとしての余地を残す。そして、大森氏のように独自のアプローチを試みる志ある仕事の受け皿にする。打ち合わせを繰り返したという証言からは、このような駆け引きが見えてくるのではないでしょうか。
ちなみに、新たな世代のファン層を会得するべく制作された『Vガンダム』以降「細い」ビームサーベルが主流になるわけですが、このような演出の切り替えるタイミングも駆け引きを裏付ける証左に私には思えるのです。

※付記
富野ブログの重鎮、富野愛好病の管理人ことkaito2198 さんから当記事へのご意見をいただきましたので、添付させていただきたいと思います。



アニメ技術の進歩という視点は確かに無視できないファクターです。イメージと技術の齟齬は検証対象として追っていく必要があるかもしれません。貴重なご意見、ありがとうございました。
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