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富野由悠季の監督術 『戦闘メカ・ザブングル大事典 (ラポートデラックス Magazine for animec life)』金山明博

『戦闘メカザブングル』

金山氏は本作から『ZZ』までの作画監督を務められた80年代富野作品の中心スタッフになりますが、原画マンの頃から富野コンテは印象に残っていたようです。

●僕は「ラ・セーヌの星」をはじめ虫プロ時代から富野さんの絵コンテは何本も経験しているんです。富野さんの絵コンテは真面目に、そして念入りに書いてあるんです。描き手としては「たいへんだ」ということをいってはいけないんですが、彼の過去の作品で苦労しているだけになんとなく苦手意識があったんですよ。「また、たいへんになるぞ!」みたいなね(笑)。本当は「これはできない」なんてことをいったらアニメーターとしては失格なんでしょうが、富野さんと仕事をするということで”覚悟した”のはたしかですね。10何年もアニメーションをやっていて構えるのも変なんですが、僕は新作が始まるたびに構えてやるんですが、特に今回は富野さんのコンテだから画面の角度が斜め上からなんです。画面の奥の奥まで見えちゃうでしょ。となると作画法でいったらセル重ねが多くなる。普通Eセルまでが限界なんだけれど”ひょっとしたらZセルまで行くんじゃないだろうか?”なんて話もあったくらいです(笑)。とにかくアニメーターがよく富野さんについていったなと思いますよ。まず物量的にたいへんな作品でしょ。それに映像で見せていくことがテーマ。富野さんのはセリフで説明しない絵コンテなんですね。演出の方にも「言葉で書くんじゃなくて、どうするのかを書くのが演出だ」という話をよくしていましたよ。絵コンテではわからないけど映像になってみるとわかりやすい――独特の富野演出だと思います。
実際にやってみて、想像していたとおりにたいへんな作品でした。「一年間、よくもったなぁ」というかんじがします。やっぱりアニメーターというのはスゴイんだな、と感心しましたよ(笑)。だいたい富野さん自身、頭がいいだけじゃなくて体でぶつかっていく行動派ですよね。文句がいえないんですよ(笑)。いってしまえば負け、みたいなかんじで。そういう意味で教えられたところというのは、作品にのめりこんでいく姿勢ということですかね。一年間シリーズを通して緊張感をどれくらい保てるか、ということなんです。だから今年は川崎大師に初詣に行って「今年は去年と違ってグチはこぼさないぞ」と誓ったりしたんです(笑)。すぐ破っちゃいましたけどね(笑)。
最後に「ザブングル」の動きについての反省なんですが、ファットマンが得意にしていた”中抜きの動き”を他のキャラクターまでがはじめちゃったことなんです。動きに特徴が出ないんですよね。だからといって全体が軽く動くかというと、メカなんか重厚な動きをしているものもある。そのへんの統一がとれていないんです。でも最近、”そうした統一がとれていないのが「ザブングル」なんじゃないか?”という気がしてしかたないんです。統一がとれてないのも作品の特徴としていいんじゃないですか。


アニメジャーナリズムではシナリオ論に比して富野コンテへの論及は少ないのが現状ですが、作画されたスタッフの方々からは具体的な発言がなされています。
富野作品では「斜め下」の構図が往々にしてみられ、湖川キャラによるアオリ絵の魅力を引きだしていたことが想起されがちです。
しかし、アオリの連続で作れるドラマは極めて限定的なものになります。アクションに対するリアクション。これだけでは複雑な群像劇を展開する富野作劇において窮屈な会話劇にしかならなかったのではないでしょうか。金山氏の指摘で面白いのは「斜め上」のカメラ位置(=俯瞰)を意識されていたことですね。「奥の奥まで見える」という事はロングショットでのカメラワークです。俯瞰は空間的な広がりを見せる効果もありますし、キャラクターの位置関係を把握させることもできます。一枚絵として位置関係を見せたうえで惹きつけるアオリ絵を使っていく。カットインや長浜監督ばりのアブノーマル演出は目立ちますが、このような基本へ忠実な姿勢は改めて明記がいるかもしれません。
余談ですが、『ザブングル』の関連資料ではアニメーターの苦労話が多く散見され、頭を下げる想いで読ませていただいています。
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